乃木坂46のメンバーがトリプルキャストで演じる舞台「じょしらく」を観劇しました。
6月27日昼のチーム「ご」公演です。

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公式ページ
http://www.nelke.co.jp/stage/jyoshiraku/

この回を選んだ理由としては、その日が休みで、推しであるひめたんこと中元日芽香が出演するから…というゴリゴリにライトなファン的思考からなんですが、結果を言うと…凄いものを見たな、と。

じょしらくは原作は読んだことはなくて、アニメを少し見た程度で予備知識はほとんどなし。
僕の個人的考えでは、映画でもそうですが、原作付のものを他メディアで展開する場合は、あくまでも原作から逸脱しない範囲でそのメディア上でしっかり完結する作品になっていれば改変は全然OKと思っているので、こういう漫画の舞台化とかも肩ひじ張らずに観ようというスタンスです。

今回もそのつもりで気楽に観ましたが…いやはや心動かされましたよ。

この舞台が幅広く一般層にアピールするキャッチーさがあるか?といえばそうではないと思うし(これは漫画原作の舞台全般に言えると思うけど)、基本乃木坂ファン向けの演出が多めだったことは言うまでもなく。

でもね、それと舞台の完成度や役者の演技とは切り離して考えるべきだと思うのでね、そういう意味では、完成度の高い舞台だったと思うのですよ。

他のチームの公演は見ていないので言及はできませんけど、チーム「ご」に関してはメンバーがそれぞれの役どころに完全に没入しているのが見て取れたし、すごく引き込まれました。

まずはみさ先輩こと衛藤美彩。
舞台経験があり、歌もダンスも演技もMCだって平均以上にこなせる彼女への期待値は最初から高かったです。そしてその期待は全く裏切られることはありませんでした。冒頭からラストまで物語を牽引し、虚構と現実と本当の現実(これは舞台を見ないと解りませんね…すみません)を行き来する演技は本当に鬼気迫るものがあったし、元々持っている姉御肌な性質をうまく役に乗せて魅了してくれました。
彼女がそれだけの演技を全力で披露することで平均値を上げ、他のメンバーも奮起するに至った結果が今回の舞台だと思うと、チーム「ご」の立役者は明らかにみさ先輩です。

次にひめたんこと中元日芽香。
彼女はおそらく最もみさ先輩に感化されたメンバーでしょう。元々歌やダンス、トークなど元々持っているスキルは乃木坂の中でも上位レベルのひめたんですが、いまいち踏み切れない性格のせいか(でもその奥ゆかしさがいいんです)、なかなか殻を破れずにいたと思います。
そういう性格だから、特に演技に関しては相当吹っ切れないと入り込めないんじゃないか、ファンとしてはそういうところが心配でもありました。
しかし、始まってみると、舞台にいたのはそんなひめたんではなく防波亭手寅という女の子でした。
幕が上がった瞬間から、乃木坂46のひめたんという存在を一切排除し、役に入り込んだ彼女の姿があったのです。
最後のカーテンコールで素に戻ると気が抜けてしまいふらついていたことからもその気の入れようが伝ってきました。
トークがメインのこの舞台、防波亭手寅として場を仕切り進行し、コメディリリーフを演じきったひめたんのその気合いの裏側にはみさ先輩の影があったように思います。
みさ先輩のように本気で役に入り込んでいる人間を前にしたら、こちらも本気でぶつからなければ舞台は成立しない。

何事も真摯に取り組むひめたんはこれまで、多くの場面で「自分はアイドルとしてどうすべきか?」と気後れして失敗してしまうことがありました。しかし今回は全くの別人になればいい。ひめたんがひめたんでなくなることで、その悩みが一切なくなり、元々もっていたポテンシャルを全力で役に生かすことができた…それがひめたんを大きくステップアップさせたんじゃないかと思います。
これまであまりイメージはありませんでしたが、舞台役者という道はひめたんに向いているのかもしれないと思いました。

そしてじょーさんこと能條愛未。
幼少時から女優を目指し、台本は一度目を通せば覚えてしまうという天賦の才を持つ彼女ですから、この舞台に関しては一切の不安はありませんでした。
舞台ならではの間の取り方はもちろん、長台詞や早い台詞などでもとちりは一切なし、さらにはアドリブを入れるなど大物の風格。
彼女は役が求めているものを感覚で察知して入り込むことのできる、いわゆる憑依型女優だと思うので、本当にコメディ向きだと思います。コメディは誰から見ても馬鹿なことを本気でやるから面白いわけで、数々の番組で「こいつ本気で馬鹿なのかも…」と常々思わせてくれるじょーさんには最適だと思いますよ!

きいちゃんこと北野日奈子。
彼女は完全に今回のダークホースでした。演技も未知数だし、大雑把な性格なので本当に舞台なんてできるの?とすら思っていましたが、終わった後にそんな自分を反省し、本当に申し訳なかったと心の中で謝りました…。
普段から笑顔で直感的で、バラエティでもとりあえず大声を出して乗り切るような豪快さを持つきいちゃんですが、それでいて他人からどう思われているかを気にしているなどセンシティブな部分があり、演じるという部分ではその感受性が非常に役立っていたと思います。
そんなところが今回の役どころ、波浪浮亭木胡桃の「周囲から一方的にイメージ付けされ、それを受け入れてはいるけど心の中ではその矛盾と戦っている」というキャラクターにぴったりハマっていたと思います。
演技はまだ伸びしろがあるという感じで、他のメンバーに引っ張られる形で演じているようでしたが経験を積んでいけば面白いことになるかも、と思いました。

そして最後にあしゅこと齋藤飛鳥。
演技経験がそれほどないにも拘らず、その風貌と独特の台詞回しで世界観を作り上げる飛鳥はやはりもう一人の天才かもしれないと思いました。
他のメンバーは役に没入しているというイメージでしたが彼女だけは役の方を自分に引き寄せているという感があり、それは何だか底が知れない雰囲気を漂わせていました。
僕が観た回は飛鳥が単独で落語を披露する回でもあり、その敢えて役に入り込まないスタイルで多くの人物に変容していく様には僕も心の底から笑わせてもらいました。
みさ先輩とは違う意味で現実と虚構を行ったり来たりする捉えどころのない演技。演技力という物差しでは測れない何かを持っているのが齋藤飛鳥という人だと思います。

長々と書いてきましたが、本当に楽しい舞台でした。
乃木坂ファンとしては各々の成長が垣間見れてうれしかったし、舞台としての完成度の高さには驚かされるし、飛鳥の落語には大笑いさせてもらいました。

最後に。

「誰だっていつも何かを演じている」

物語中にそんな言葉が出てきました。
これにははっとさせられました。

「仕事をしている自分」「家庭にいる自分」「友達といる自分」…誰しも相手や場所や時間によって自分というキャラクターを演じ分けているはずです。
その中で折り合いがつかなくなって疲れてしまう人、壊れてしまう人もたくさんいます。
そうした「自分」たちを、矛盾を抱えながらも、どれも本当の自分として扱ってあげることが生きることなんだなぁと思った次第。

だから僕も乃木坂46の握手会に行ったり同じCD何枚も買ったりしてもライトなファンと自称し続けるのはやめ…やめ…うーん。



やめません。