ベーシストは変態である。

ベーシストである僕がこんなことを言うのも何ですが、これは音楽を始めてから十数年、持論として持ち続けています。
これまで音楽をやっている人に話すと割と同意してもらえています。

今回は「なぜベーシストは変態になるのか?」もしくは、「なぜ変態はベーシストになるのか?」
ここに迫っていきます。

変態、といっても性的な意味だけではありません。
わかりやすく変態としていますが、要するにベースを選ぶ人間には「偏執的な性格が多い」ということなのです。

まず、みなさんはバンドといえば何を思い浮かべますか?

ライブやTV等で前面に出てくるボーカルやギターではないですか?
そして次に、後ろにどっしりと構えるドラム、華麗に鍵盤を操るキーボードなど…ベースを最初に思い浮かべる人は多分いません。
「いや、私はベースを最初に思い浮かべたよ!」という人、あなたみたいなひねくれ者はベースに向いてます。今からベースをやりましょう。

普通の人からすると、ベースってギターと見た目の違いが分からないし、曲のどの部分を弾いてるのか全く判別できないと思います。
僕も最初にベースを始めた理由は、後に一緒に音楽をやることになるHajimeくんが先にギターを始めていたので「今からギター始めても勝てねえな」と思ったのと、当時好きだったL'Arc-en-CielのベースのTetsuさんが凄く格好良く、その憧れからで、ベースの音楽的な役割は全く理解していませんでした。

実際始めてみると、ベースは本当に地味です。
基本は楽曲の低音部を支える役割ですから、普通の人は聴いていないような低音でボーンボーンやるだけで、目立つことなど滅多にありません。
そのクセ、間違えると和音の基本の音がおかしくなってしまうので不協和音になりメチャクチャ目立ちます。

さらにベースはリズム楽器でもあります。
ドラムと合わせて「リズム隊」という呼ばれ方を聞いたことがある方も居るのではないでしょうか。
ベースはドラムの叩き出すリズムに音程を付けてビートを作っていきます。なので、しっかりリズムを捉えて演奏できなければ全体がずれて聞えてしまいます。

要するにベースは、正確に厳格に演奏しているとまっっっったく目立たないけど、間違えたり下手だったりすると曲がメチャクチャになってしまい超目立つ…という、究極にマゾヒスティックな楽器なのです。

ここでひとつの変態性が表われましたね。
そう、ベーシストはドMなのです。
バンドという華々しい舞台に立ちながら大半の人にその役割を理解されず、しかしそれでも黙々と正確に演奏を続け、ミスしたときには戦犯の如き非難を浴びる…それを楽しむ姿勢、完全にMです。もしくは修行僧です。

しかし逆に考えてみて下さい。
楽曲の和音の根底を担い、ビートの基礎を作り出すのはベースだということになりませんか?
実は、ベースはリズムセクション(ドラム、リズムボックス等)とコード・メロディ楽器(ギター、ボーカル等)を繋げる接着剤のような役割を担っているのです。

ドラムが8ビートを刻んでいても、ベースが16ビートのフレーズを弾くと16ビートの跳ねたリズムに聞えますし、ギターがコードを変化させてもベースが同じ音を弾き続けるとスケールの大きな曲に聞えます。そうやって演奏の仕方によって楽曲の性格を変えることができるのがベースなのです。

ベーシストは「このコード、リズムでどの音をどう弾くか?」を常に考えている人種です。
これに正解はありません。
しかしそれは楽曲の雰囲気を決定する大きな要素なので、自分なりの正解を求めてベーシストは終わりなき探求を続けているのです。

そうなるとベーシストは必然的にオタクっぽくなります。曲を分析・分類して、他人の演奏を参考にしたり、自分ならどうするかなどを考えたりするので、色んなジャンルの音楽を聞くことが多いですし、ベースだけじゃなく他の楽器もよく見て、どんどん追求していきます。そうやって音楽の知識が増えると更に枝分かれして色んなジャンルに飛んでいき、オタク気質があるのでそのままその道のオタクになってしまうのです。

僕の場合で言えば元々映画・アニメのオタクでしたが、そうやってサブカルに大きく傾倒して歴史・仏像などのメジャーなところから、果てはオカルト・未確認生物のオタクへとなっていきました…。
そして今では乃木坂46のライトなファンです。

乃木坂46には乃木團というグループ内で結成したバンドがあります。

メンバーは
ボーカル
 能條愛未
 中元日芽香(※僕の推しメンです)
ギター
 川村真洋
  深川麻衣(※この間の握手でやられたメンバーです)
ベース
 中田花奈
ドラム
 齋藤飛鳥
キーボード
 永島聖羅
という7人です。

この中でベースを弾いているのが中田花奈というメンバーです。
彼女は自分自身がアイドルでありながらアイドルオタクという二律背反を抱えるメンバーで、オタクという視点から常にアイドルというものを客観視し、乃木坂46内でも自分に求められる役割をその場で判断してバラエティで大きく弾けたり、他にバラエティ的なメンバーがいるとツッコミに回ったりと非常にバランス感覚に優れた女性です。
さらにはダンスのスキルが高く、決められた振り付けを完全に習得した上で独自の表現をプラス出来る才能溢れるメンバーでもあります。

そんな彼女のオタク気質とリズム感、冷静な状況分析力、ちょっとシニカルな性格は非常にベーシスト向きだと言えるでしょう。
彼女をベースに選んだのが運営陣の誰かはわかりませんが、英断と言わざるを得ません。

初ライブの時からあまり動かず、殆ど目立たない演奏姿勢を貫いている彼女ですが(しかし笑顔は忘れていません)、演奏は着実に進化しています。
元々は氣志團の「One Night Carnival」を演奏するだけの企画バンドだったので、「One Night~」は先日行われた台湾ライブまで毎回演奏していますが、他のメンバーが同じ演奏の中でミスを無くすように練習を積み重ねているのに対し、かなりん(※愛称です)はより原曲に近いベースラインを弾けるように練習しているのです。
ベースの役割が楽曲の根幹を担うものだと理解し、原曲の雰囲気を再現する為に難易度の高い演奏にチャレンジしている…。これは全く目立たない努力です。しかし、非常にベーシストらしい一面であると言えます。

この事実に気づいたとき、僕の目からは涙が流れていました。
中田花奈は本物のベーシストなのだ。
このことに気づけたのは自分がベーシストだったから…僕にベースを与えてくれた神に感謝しました。

中田花奈は全ベーシストの未来です。
今からでも遅くありません。
皆さんも乃木坂46の活動を追いかけ、乃木團を追いかけ、中田花奈を追いかけましょう!
ちなみに僕の推しメンは中元日芽香ことひめたんですのであしからず。

ベーシストは変態であり、オタクであり、探求者である…。
僕はこの持論を死ぬまで言い続けるつもりです。


~乃木團近影~
左から中元日芽香(ひめたん)、能條愛未(じょーさん)、深川麻衣(まいまい)、齋藤飛鳥(あしゅ)、川村真洋(ろってぃ~)、永島聖羅(せいらりん)、中田花奈(かなりん)
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乃木團台湾ライブ
「One Night Carnival」

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